これから個人・小規模で保険代理店を目指す人が、この改正でいきなり不利になるわけではありません。
ただし、比較推奨販売のルール変更(いわゆる「ハ方式」廃止・「ロ方式」一本化)は、規模を問わず乗合代理店全般に関わります。改正の中身を正しく理解し、体制の整った保険会社・代理店を選ぶことが、これからの代理店選びで重要になります。
2026年保険業法改正とは?
施行日と全体像
2026年6月1日、「保険業法の一部を改正する法律」(令和7年法律第54号)が施行されました。金融庁は2026年3月30日、改正に伴う内閣府令等の公布とパブリックコメントの結果を公表しています。
改正の柱は、複数の保険会社と契約する「乗合代理店」の業務品質向上と、保険募集の適正化です。特に取扱規模の大きい乗合代理店が保険市場で大きな存在感を持つ一方、顧客の意向よりも手数料水準や資本関係を優先した提案が課題として指摘されてきた経緯があります。
体制整備義務
法令等遵守責任者の設置や苦情処理体制の整備など。主に大規模な乗合代理店が対象です。
比較推奨販売の適正化
「ハ方式」を廃止し、顧客の意向に沿った説明が求められる「ロ方式」に一本化されます。
過度な便宜供与の禁止
保険会社から代理店への経営支援・教育支援などのあり方も見直しの対象です。
改正の直接対象は
「特定大規模乗合保険募集人」
法令等遵守責任者の営業所ごとの設置、統括責任者の配置、苦情処理・内部監査・社内通報体制の整備といった重い体制整備義務を負うのは、「特定大規模乗合保険募集人」に該当する代理店です(金融庁, 2026年3月30日公表)。
具体的な規模要件について、金融庁の公式発表では明確な数値基準は確認できませんでした。一部の専門メディアでは「年間手数料20〜30億円程度、全国70〜100社程度が対象になる見込み」と報じられていますが、この数値は金融庁の公式発表で裏付けが取れた情報ではないため、あくまで目安として捉えてください。
これから個人・小規模で保険代理店を目指す場合、体制整備義務の直接の対象になる可能性は低いと考えられます。開業直後から法令等遵守責任者の設置などを自ら求められる場面は限定的です。
乗合代理店が押さえておきたい
比較推奨販売のルール変更
一方、比較推奨販売に関するルール変更は、規模を問わず「二以上の所属保険会社等を有する保険募集人」、つまり乗合代理店全般に関わります。
これまで一部で認められてきた「ハ方式」——商品特性や保険料水準などの客観的な基準によらず、資本関係や手数料水準、事務手続きの都合などを理由に特定の商品を絞り込み・推奨する方式——は廃止されます。今後は「ロ方式」、すなわち複数の比較可能な商品の中から顧客の意向に沿って選別し、合理的かつ具体性のある基準・理由を説明したうえで提案する方式が求められます。
乗合代理店として独立を考えているなら、「なぜこの商品を勧めるのか」を顧客に説明できる知識・体制が開業後に必須になる、と理解しておきましょう。専属代理店と乗合代理店の違いもあわせてご確認ください。
これから保険代理店を
目指す人への3つの影響
1. 直接の規制対象にはなりにくい
体制整備義務は主に大規模な乗合代理店向け。個人・小規模開業では、この点の負担は限定的と考えられます。
2. 乗合代理店なら説明力が必須に
比較推奨販売のルール変更に対応するため、商品選定の理由を顧客に説明できる知識が求められます。
3. 手数料の考え方が変わる可能性
業界では、規模や増収率よりも業務品質を重視する評価制度への転換が報じられています。詳細は今後の各社の制度発表を確認する必要があります。
法改正後、どんな会社・代理店を選ぶべきか
今回の改正は、乗合代理店に対して「顧客本位の説明力」を一段と求める内容です。これから保険代理店を目指すなら、募集人向けの研修制度や商品説明ツール、コンプライアンス体制が整った保険会社・代理店を選ぶことが、開業後にスムーズに業務品質基準へ対応するための近道になります。
資格要件や登録の流れについては保険代理店になるために必要な資格はある?、開業に伴うリスクへの向き合い方は保険代理店を開業するときリスクはある?、業界全体の見通しは保険代理店の将来性の記事もあわせてご覧ください。
保険業法改正に関するよくある質問
2026年の保険業法改正で、個人での新規開業も登録要件が厳しくなりますか?
体制整備義務が課されるのは主に「特定大規模乗合保険募集人」であり、今回確認できた範囲では、個人での新規開業に直接影響する登録要件の変更は見当たりませんでした。ただし、乗合代理店として開業する場合は、比較推奨販売のルール変更(ロ方式への一本化)への対応が必要です。
専属代理店なら今回の改正の影響を受けませんか?
比較推奨販売のルールは「二以上の所属保険会社等を有する保険募集人」=乗合代理店が対象のため、単一の保険会社とのみ契約する専属代理店は、このルールの直接適用対象ではありません。専属代理店と乗合代理店の違いは、関連記事もご参照ください。
この改正によって、保険代理店の将来性は下がりますか?
今回の規制強化は業界全体の信頼性向上を目的としたものであり、業界の将来性そのものを否定する内容ではありません。むしろ、体制の整った会社・代理店とそうでない代理店の差が今後明確になっていくと考えられます。
まとめ:法改正は正しく理解すれば怖くない
2026年6月施行の改正保険業法で重い体制整備義務を負うのは、主に「特定大規模乗合保険募集人」に該当する大規模な乗合代理店です。これから個人・小規模で保険代理店を目指す人が、直ちにこの義務の対象になるわけではありません。
一方で、比較推奨販売のルール変更は乗合代理店全般に関わるため、乗合代理店として独立を考えるなら仕組みを理解しておく必要があります。法改正の内容を正しく押さえたうえで、研修・コンプライアンス体制が整った会社を選ぶことが、これからの代理店選びの判断材料の一つになります。
参考資料
法改正のニュースは見出しだけで「規制強化=不利」と受け止められがちですが、今回の改正で重い義務を負うのは主に大規模な乗合代理店です。これから代理店を目指す個人にとって重要なのは、規制の中身を正しく理解したうえで、体制の整ったパートナーを選ぶことです。
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